農場の殺虫剤を使わない取り組み*田んぼに棲んでいる生き物たちと仲良く暮らしてゆくために


すぎやま農場では農業環境技術研究所田中幸一さんによる研究成果の基に2010年10月以降2011年作付け分から有機栽培はもちろんのことですが特別栽培、慣行栽培及び飼料用栽培等すべての作物や関連する畦、管理している山林等に殺虫剤の使用を禁止し、生物多様性の復活のために取り組みを開始しています。
そして、殺虫剤を使わないことで何がおきるのかを実証しています。


すべての圃場や施設で殺虫剤使用をやめた結果のリポートです。


すべての田んぼや畑、施設やその周辺等で殺虫剤使用をなぜやめたの。

2010年までは特別栽培の水稲作付け時に苗箱施用剤を使用しての作付けを行っていました。
2010年の使用薬剤は製品名嵐ダントツ箱粒剤
成分はクロチアニジン及びオリサストロビンの混合剤です。
特にクロチアニジンの効果はすばらしくイネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ、ウンカ類、ニカメイチュウ等は栽培上ほとんど問題を起こさないというすばらしい効果が出ていました。
しかし、ヨーロッパやアメリカ等で指摘されていたことが自分の管理させていただいている圃場内でも起こっているのではと言う危機感から2010年の9月以降殺虫剤の使用をやめることにしました。
ここでいちばん問題となるのは外来昆虫でもあるイネミズゾウムシの攻撃から稲を守ることは出来るのだろうかと言う不安です。
次に、斑点米で品質低下を引き起こすカメムシの殺虫剤による対策が出来ないことでお米が売り物にならないのではという不安です。


しかし、実際に殺虫剤を使わない農業にしてみたところ2011年については、イネミズゾウムシによる被害はほとんど無く、減収につながる要素はあまり感じませんでした。


次に、カメムシ被害についてですが、
ポジティブリスト制が導入された平成18年からカメムシ対策の殺虫剤使用は農場内では行われていません、殺虫剤を散布することで起きる悲劇と使わない事で起きる農場内の農産物品質低下を秤にかけたら農場として殺虫剤を使わない方が周りにかける迷惑が少ないと判断したためです。


ここで考えなければならないのは、冬の間に何とか自然に近い状態に田んぼが戻ろうとしたにもかかわらず農民の安易な考えで殺虫剤入り箱施用剤を使うと、この時点で田んぼの生態系はほぼ終末の時を迎えていたという事実でした。
カメムシ対策用の本田出穂期殺虫剤使用を休んでからの6年間は本当にカメムシの被害がひどく色彩選別機で斑点米を除去する作業に追われ収穫後から翌年の3月頃まで毎日の作業に疲弊していたのが実情です。
ところが2011年に箱施用を休んだ年には斑点米の混入比率が断然下がったのです。
何がこの被害粒の数値を下げたのでしょうか。


平成22年の夏に地元のJAさんが農場の管理している圃場の一部にまちがってカメムシ用の殺虫剤を散布してしまいました。
そのときの被害率が一番高く、
特別栽培圃場の被害粒混入率は約1.2パーセント
有機栽培圃場の被害粒混入率は約0.8%でした。
ここでお米の農産物検査法による斑点米の検査規格なのですが
1等米0.1%以内
2等米0.3%以内
3等米0.7%以内
それ以上混入した物は規格外となってしまいます。


今までの色彩選別機の性能は0.5%までの着色粒であれば1回の選別で除去出来ますがそれ以上となると1回ではむずかしく、同じ原料を何回も通すという作業を行わなければならず大変な作業となります。
でも、今の新型は約10パーセントくらいの混入率であればすべて除去出来る性能を持っているため価格から見ても環境保全が行いやすくなってきています。
そして、2011年に殺虫剤の使用をすべて休んで起きたことはカメムシ被害が2006年以降いちばん低かったという事実です。
圃場にもよりますが、今まで平均で0.3から0.5パーセントだった混入率が0.1から0.3に下がったのです。


 この事実を裏付けるように2012年特栽の田んぼにはクモたちの数が圧倒的に増え、水生昆虫も特栽の田んぼでタガメたちをみることが出来るようになってきたのです。でも、ここでお願いなのですが、田んぼにいるタガメさんやコオイムシ、タイコウチやミズカマキリそしてホタルさんたちは、この場所にいるから命が輝き、田んぼというひとつのゆりかごの中で命を循環出来るのです、安易にお金や趣味のために捕獲したりしないでほしいです。
 私たち人間は、今まで彼らの生きる権利を奪い続けていたのです、そして数が減って希少生物になったらお金のために乱獲したというのでは本当に人間は地球にとっての害虫になってしまいます。



特栽の田んぼにタガメがいるなんてとても信じられない光景なのですが、そのほかにもコオイムシたちがそれ以上に多く生息していることも分かってきました。



農業における生物多様性の機能の活用
農業技術研究所 田中幸一さん

有機・減農薬栽培は水田の水生昆虫にプラスの効果があり


農業に有用な生物多様性の指標生物
調査・評価マニュアル


いま、農業環境技術研究所では、次世代の農業技術として、生態系をうまく利用した、生物多様性による生産性の向上技術の基礎研究を始めています。

お米の栽培技術によって田んぼの中の生き物たちの数がどのくらい違うのかをグラフ化した物があります、よろしければデータをご覧ください。栽培技術毎のクモの生息数


農薬によって生き物たちを殺し続ける農業よりも生態系をいい形で構築することによって人間にとって敵を作らない農業への変革はとても重要で地球環境にとってもとても求められていることです。

現在の日本は、私たちが選んだ物によって将来を変えることが出来ます、地球環境のために、いま私たちひとりひとりが環境を考え選ぶことを始められれば人間は地球の害虫ではなく仲間になれるはずです。
2016年の収穫作業も終盤の10月15日、毎日お米の籾摺り作業を行っていますが今年のカメムシ被害は0.08から0.12%の混入率です、すべての圃場で殺虫剤を使わなくなって6年目の報告です。今年は9月に入る頃のカメムシの発生が多く、特に出穂の遅い有機栽培圃場の被害が心配されたのですが、有機栽培のコシヒカリは混入率0.08%という結果となっています。すべて色彩選別によって混入率0.04%以下となっています。

2016年産コシヒカリ玄米の写真 撮影日2016年10月10日