農場の殺虫剤を使わない取り組み*田んぼに棲んでいる生き物たちと仲良く暮らしてゆくために


すぎやま農場では農業環境技術研究所田中幸一さんによる研究成果の基に2006年10月以降2007年作付け分から有機栽培はもちろんのことですが特別栽培、慣行栽培及び飼料用栽培等すべての作物や関連する畦、管理している山林等に殺虫剤の使用を禁止し、生物多様性の復活のために取り組みを開始しています。
そして、殺虫剤を使わないことで何がおきるのかを実証しています。


すべての圃場や施設で殺虫剤使用をやめた結果のリポートです。


すべての田んぼや畑、施設やその周辺等で殺虫剤使用をなぜやめたの。

2006年までは特別栽培の水稲作付け時に苗箱施用剤を使用しての作付けを行っていました。
使用薬剤は製品名嵐ダントツ箱粒剤
成分はクロチアニジン及びオリサストロビンの混合剤です。
特にクロチアニジンの効果はすばらしくイネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、ツマグロヨコバイ、ウンカ類、ニカメイチュウ等は栽培上ほとんど問題を起こさないというすばらしい効果が出ていました。
しかし、ヨーロッパやアメリカ等で指摘されていたことが自分の管理させていただいている圃場内でも起こっているのではと言う危機感から2006年の9月以降殺虫剤の使用を全面的に休むことにしました。
ここでいちばん問題となるのは外来昆虫でもあるイネミズゾウムシの攻撃から稲を守ることは出来るのだろうかと言う不安です。
次に、斑点米で品質低下を引き起こすカメムシの殺虫剤による対策が出来ないことでお米が売り物にならないのではという不安です。

しかし、実際に殺虫剤を使わない農業にしてみたところ、イネミズゾウムシによる被害はほとんど無く、減収につながる要素はあまり感じませんでした。

ここで考えなければならないのは、冬の間に何とか自然に近い状態に田んぼが戻ろうとしたにもかかわらず農民(昔の私)の安易な考えで殺虫剤入り箱施用剤を使うと、この時点で田んぼの生態系はほぼ終末の時を迎えていたという事実でした。

ところが2007年に箱施用を休んだ年には斑点米の混入比率が断然下がったのです。
何がこの被害粒の数値を下げたのでしょうか。

たんぼに住んでいる生き物たちの生態系がよそ者の侵入を防ぐ方向に転換され始めたと言う事が事実のようです、カメムシたちはたんぼで一生を暮らしているのではなく産卵前に大量の食料がほしくてたんぼに来てしまうと言うことがどうも事実のようです、そこに何もいなければカメムシたちにとって食べ放題の場所を人間が提供してしまったことになります、でも天敵昆虫やカエルたちが待ち構えている圃場ではカメムシは餌として食べられてしまうためそう簡単にはたんぼに来られなくなります、これこそが自然の摂理であったのかと私はとても良い勉強をさせていただきました。

2010年の夏に地元のJAさんが農場の管理している圃場の一部にまちがってカメムシ用の殺虫剤を散布してしまいました。
そのときの被害率が一番高く、
特別栽培圃場の被害粒混入率は約1.2パーセント
有機栽培圃場の被害粒混入率は約0.8%でした。
ここでお米の農産物検査法による斑点米の検査規格なのですが
1等米0.1%以内
2等米0.3%以内
3等米0.7%以内
それ以上混入した物は規格外となってしまいます。

現在の色彩選別機は約2パーセントくらいの混入率であればすべて1回で除去出来る性能を持っているため価格から見ても環境保全が行いやすくなってきています。

 2016年ころから特栽の田んぼにはクモたちの数が圧倒的に増え、2019年頃から水生昆虫も特栽の田んぼでタガメたちをみることが出来るようになってきたのです。でも、ここでお願いです、田んぼにいるタガメさんやコオイムシ、タイコウチやミズカマキリそしてホタルさんたちは、この場所にいるから命が輝き、田んぼというひとつのゆりかごの中で命を循環していただきたいのです、安易にお金や趣味のために捕獲したりしないでほしいです。
 私たち人間は、今まで彼らの生きる権利を奪い続けていたのです、そして数が減って希少生物になったらお金のために乱獲したというのでは本当に人間は地球にとっての害虫になってしまいます。



特栽の田んぼにタガメがいるなんてとても信じられない光景なのですが、そのほかにもコオイムシたちがそれ以上に多く生息していることも分かってきました。



農業における生物多様性の機能の活用
農業技術研究所 田中幸一さん

有機・減農薬栽培は水田の水生昆虫にプラスの効果があり


農業に有用な生物多様性の指標生物
調査・評価マニュアル


いま、農業環境技術研究所では、次世代の農業技術として、生態系をうまく利用した、生物多様性による生産性の向上技術の基礎研究を始めています。



農薬によって生き物たちを殺し続ける農業よりも生態系をいい形で構築することによって人間にとって敵を作らない農業への変革はとても重要で地球環境にとってもとても求められていることです。
たんぼの生態系が整っているとそこから生産される物質によって植物たちは成長し私達に生物多様性の事実情報と共に食を提供してもらうことが出来ます、私達はいただく事でこの情報のなかから健全な生態系の記録をいただき腸内細菌たちとよりよい命のやりとりを行うことが出来るようになります、これこそが私達地球上の生命が輝くための第一歩ではと考えます。

現在の日本は、私たちが選んだ物によって将来を変えることが出来ます、地球環境のために、いま私たちひとりひとりが環境を考え選ぶことを始められれば人間は地球の害虫ではなく仲間になれるはずです。
2016年の収穫作業も終盤の10月15日、毎日お米の籾摺り作業を行っていますが今年のカメムシ被害は0.08から0.12%の混入率です、今年は9月に入る頃のカメムシの発生が多く、特に出穂の遅い有機栽培圃場の被害が心配されたのですが、有機栽培のコシヒカリは混入率0.08%という結果となっています。すべて色彩選別によって混入率0.04%以下となっています。

2016年産コシヒカリ玄米の写真 撮影日2016年10月10日



2020年11月時系列を修正しました。